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これまでの研究

力覚応答に関与するアクチン骨格制御因子Rho-GEFの同定と機能解析

 細胞は力の作用を受けると細胞内の細胞骨格の一つであるアクチン骨格を再構築してその刺激に対応することが知られています。細胞に力が負荷されると、細胞の形の変形による細胞膜、又は、細胞が隣の細胞や細胞間マトリックスに接着している部位に力がかかります。これらの部位に存在するイオンチャネルや接着分子がこのアクチン骨格の再構築に必要であることは明らかです。また、アクチン骨格はRhoファミリー分子と呼ばれる一群の低分子量Gタンパク質(ヒトで約20種類)がスイッチとして働くことでその構造の性質が決定されており、力の負荷によってRhoファミリータンパク質が活性化されることが分かっています。しかし、力のかかる部位において力を感じる分子、また、Rhoファミリーの活性を時空間的に制御する分子機構はほとんど明らかになっていません。

 Rhoファミリー分子はヒトで約20種類も存在していますが、高等生物の細胞は複雑で協調したアクチン骨格構造を作り出す必要があるため、Rhoファミリー分子の活性を制御する上流のタンパク質がさらに多く存在してることが知られています。そのなかで、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子(Rho-GEF)と呼ばれる一群の分子(ヒトで約80種類)がRhoファミリーの活性化因子として働くことが分かっています。それらの中に力覚応答に関与するRho-GEFが存在することは予想されていましたが、その実態は不明でした。

 私たちは、細胞の力覚応答に関与するRho-GEFを同定することで、細胞が機械的な力を感知する分子機構に迫ろうと考えました。細胞の機械的な力に対する応答の一つとして、細胞を繰り返して引き伸ばす繰り返し伸展刺激があります。血管が拍動で収縮を繰り返している状況などを模したモデルです。この繰り返し伸展刺激に対して、多くの細胞は伸展する方向に対して垂直に向きを変える性質を持ちます。この時に、細胞は細胞内のアクチン骨格構造を作りかえて(再構築)細胞の形態を変化させています。このアクチン骨格の再構築には、繰り返し伸展刺激のシグナルを受けて細胞の様々な部位で、また、適切なタイミングでRhoファミリータンパク質の活性が制御されていると考えられました。そこで、細胞内の各々のRho-GEF分子をRNA干渉法で量を減らして(発現抑制を行い)細胞が繰り返し伸展によって向きを変える応答に影響が出るかを検討しました。63種類のRho-GEFについて解析し、その結果、11種類のRho-GEFの発現抑制によって繰り返し伸展刺激による細胞の配向が乱れることが分かりました。この11種類のRho-GEFは、細胞に機械的な力が負荷された時に作動するシグナル伝達経路に支配されRhoファミリー分子を活性化するものであると考えられました。

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